【株式会社の設立手続−設立無効の訴え】

株式会社の設立手続に瑕疵がある場合、会社の設立は無効となります。
会社の設立の無効原因となるのは、例えば、定款の絶対的記載事項の記載がないか、記載内容が違法な場合、定款に公証人の認証がない場合、設立時発行株式に関する発行事項について発起人全員の同意がない場合、創立総会の招集がない場合などが考えられます。つまり、会社の設立手続の過程にこのような瑕疵が存在する場合には、一応の会社設立手続が完了したとしても、その会社の設立は無効となります。
しかし、民法の一般原則に従って無効主張又は取消が行われるとすると、会社と関係する当事者の数が多数に及ぶ可能性が高いことから影響が大きすぎるため、会社法では会社の設立無効の主張方法を制限しています。
具体的には、会社設立無効の主張権者は株主・取締役などに限定して、会社成立の日から2年以内に限り、訴えの方法によってのみ無効主張できることとされています。訴えは会社を被告とし、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に提起することになります。
但し、会社設立無効の訴えが提起されたとしても、裁判所はその訴えを権利濫用と判断するとき、瑕疵が極めて軽微なものであると判断するとき、あるいは瑕疵がすでに補完されているため訴えを提起する正当な利益を原告が有しないと判断するときは、請求を棄却できると解されています。
判決の結果、会社設立が無効となった場合には、この判決は訴訟当事者のみならず第三者に対しても効力を有します。しかしながら、取引の安全を考慮して、この会社・株主及び第三者間においてすでに生じた権利義務は、無効判決により影響を受けないものとされています。
反対に判決の結果、会社の設立が有効となった場合には、その判決は訴訟当事者間についてのみ効力を有します。従って、別な当事者が会社設立無効の訴えを別個提起することはできます。

【株式会社の設立手続−設立手続に関する責任規定】

株式会社の設立手続に不正などがあった場合、そのような会社が設立されることの影響が大きいため、会社法では発起人などについて以下のような責任規定を置いています。
会社の設立に際して現物出資や財産引受が行われた場合で、その財産の価額が定款に定められた価額に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は連帯して会社に対して価額補填する義務を負います。但し、発起設立の場合には現物出資などを行った発起人以外の発起人又は設立時取締役が、その職務を行うにつき注意義務違反がなかったことを証明したときにはこの義務を免れます。また、裁判所の選任した検査役の調査を受けた場合にも、同様にこの義務を免れます。
さらに、現物出資などの場合に裁判所の選任した検査役の調査に代わり財産の価額の証明を行った弁護士などについても、価額補填義務があります。これについても同様に注意義務違反がなかったことを証明したときには、この義務を免れます。
このような発起人及び設立時取締役の責任は、総株主の同意がある場合には免除することもできます。
次に、発起人、設立時取締役及び設立時監査役が会社の設立手続において職務を怠ったことにより会社に損害が発生した場合には、連帯して賠償する責任を負います。
以上のような設立する会社に対する責任以外にも、第三者に対して発起人などが責任を負う規定があります。
発起人、設立時取締役及び設立時監査役が会社の設立手続においてその職務を怠ったことにつき悪意・重過失があった場合には、これにより損害を受けた第三者に対して連帯して賠償する責任を負います。
また、設立中の会社が結果的に成立に至らなかった場合には、会社の設立手続の過程として発起人として行った行為から生ずる全ての費用を発起人が負担することになります。


【株式会社の設立手続−募集設立A】

募集設立における引受人は、払込期日までに発起人が定めた払込取扱銀行などに払込金額全額を払い込まなければなりません。
期日までに払い込みが行われない場合には、当然に失権します(株主となれません)。この点、発起設立の場合での発起人が期日までに払い込みを行わないケースでは失権手続を経た上で失権するのに対して、募集設立の場合での引受人については当然に失権する(自動的に失権となる)という違いがあります。
発起設立の場合と異なり、募集設立では払込取扱銀行による払込金保管証明という制度があります。この保管証明書を発行した銀行などは、払込金額について証明書と事実が異なることを会社に対抗できないことになっています。すなわち、実際に払込が行われなかった場合や実際の払込金額が少なかった場合でも、証明書を発行した以上、払込取扱銀行などは成立後の会社へ証明した金額を払込金として引き渡さなければなりません。
このような制度が採用されているのは、払込を仮装するという不正を防止するためです。
払込を仮装するケースとしては、会社では「預合い」を規制しています。「預合い」とは、発起人が払込取扱銀行から借り入れを行った上でこれを払込金に充て、この借入金の返済があるまでは払込金(成立後の会社の預金となります)を引き出さない旨の約束をすることをいいます。このような払込は単に銀行の帳簿上の操作に過ぎないため、有効な払込があったとはいえません。そこでこのような払込の仮装である「預合い」があった場合には、会社法で罰則が規定されています。
また、このような「預合い」に代わり、会社法では直接規制のない「見せ金」という方法もあります。「見せ金」とは、発起人が払込取扱銀行以外の者から借り入れをして払込に充て、会社の成立後に直ちにこれを引き出して借入先に返済するというものです。「預合い」とは異なり実際に金員の移動があるのが特徴ですが、実質的に見れば会社への有効な払込があったとは言えないため、会社法上の直接の規制はないものの有効な払込とは解されていません。
募集設立においては、発起人は払込期日後に遅滞なく創立総会を招集しなければなりません。創立総会は、成立後の会社の株主により構成される株主総会に相当する設立中の会社の機関であり、株式引受人により構成されます。その運営方法などについても、株主総会と同様の規定が設けられています。
この創立総会では、会社の創立に関する発起人の報告、設立時取締役などの選任・解任、設立時取締役などによる調査、などが行われます。

【株式会社の設立手続−募集設立@】

会社設立に際して発行する株式の一部のみを発起人が引き受け、残りについては他の引受人を募集する設立形態を「募集設立」といいます。募集する人数が50名以上で、かつ、株式の発行総額が1億円以上の場合には、事前に内閣総理大臣への届出が必要となり、また法定の目論見書を作成しなければなりません。
発起人は、募集設立による場合には募集により引き受けた者に対して発行する株式についての数、払込金額、払込期日などを決定しなければなりません。
また、発起人は募集に対して申込を行う者に対して、定款の記載事項、株式に関する決定事項、払込取扱場所などを通知しなければならず、申込を行う者は、申込人の氏名住所、引き受ける株式の数を記載した書面を発起人に交付しなければなりません。
この申込方法については、従来の商法においては発起人が作成した株式申込証によらなければならないとされていましたが、会社法では発起人の承諾があれば電磁的方法による申込も可能とされました。
申込に対して、発起人は株式の割当てを受ける者及びその割当て株式数を定めなければなりませんが、この割当ては発起人が自由に決定できるとされています。割当てがなされると株式申込人は株式引受人となり、割当てられた株式に応じた払込義務を負います。
このような株式の申込、割当て、引き受けについては会社設立手続の重要な過程であることから法的保護の必要性が高いため、株式の申込については民法上の心裡留保による無効規定(但書、本心とは異なる場合に無効となるケース)、通謀虚偽表示による無効規定(本心でないことを当事者双方がわかっている場合に無効となるケース)の適用はありません。また、株式引受人が創立総会において議決権を行使した後は、民法上の錯誤による無効規定(錯誤があった場合に無効となるケース)、詐欺・強迫による取消規定(詐欺又は強迫による場合には取り消すことができるケース)の適用もありません。

【株式会社の設立手続−発起設立A】

発起人は、定款に関する公証人の認証を受けた後、遅滞なく変態設立事項(現物出資や財産引受などのことです)を調査させるため、検査役の選任を裁判所に申し立てなければなりません。裁判所に選任された検査役は、例えば現物出資の財産の価額の妥当性などを調査し、これを裁判所に報告します。その結果、裁判所が不当と認めた場合には、これを変更する決定を行わなければなりません。
このように、例えば現物出資により会社を設立する場合には、原則として裁判所の選任した検査役の調査を受けなければならず、この手続きには費用と時間を要します。この制度趣旨は、ある意味で特殊な会社設立形態となる変態設立事項について不当な結果が生じないように担保するというものですが、この検査役の調査を一律適用すると会社の設立形態についての柔軟性機動性を事実上阻害してしまうおそれもあります。
そこで、会社法では例外的に一定の要件を満たす場合には、裁判所の選任した検査役の調査を省略できることとされています。
検査役の調査を受けなくともよいのは、次の特則に該当する場合です。
@現物出資および財産引受の目的たる財産の定款に定めた価額の総額が500万円を超えないとき
A上記財産が市場価格のある有価証券であって、定款に定めた価額がその市場価格を超えないとき
B定款に定められた上記財産の価額が相当であることについて、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人(公認会計士の法人です)、税理士または税理士法人の証明を受けた場合(財産が不動産である場合には、さらに不動産鑑定士の鑑定評価も必要)
また、会社設立手続において、発起人は出資の履行が完了した後に、遅滞なく設立時取締役その他設立時役員を選任しなければなりません。これらの設立時役員の選任は、発起人の議決権の過半数により決定します。
この設立時取締役などは、設立の手続が法令定款に違反していないことなどを調査しなければなりません。そして調査の結果、法令定款違反の事実を把握した場合には、発起人にその旨通知しなければなりません。そのような報告を受けた発起人は、必要な是正措置を講ずることになります。

【株式会社の設立手続−発起設立@】

会社設立手続において、定款が作成され、株式発行事項が決定されると、次に株式の引受けなどが行われることになります。
この株式の引受けにあたって、設立時に発行する株式の全てを発起人のみで引き受ける場合を「発起設立」といい、発起人以外も株式を引き受ける「募集設立」とは区別されています。
実務的には、既存会社が別会社を設立するなどの場合を除いて、大半が発起設立による設立手続が行われます。
発起人が株式を引き受けた場合には、遅滞なくその引き受けた株式について払込を行わなければなりません。前述の通り、払込は金銭出資であっても現物出資であっても構いませんが、現物出資の場合には定款の相対的記載事項となります。従って、定款に現物出資に関する記載がない場合には、その現物出資は無効となります。
なお、払込を行わない発起人は所定の失権手続を経て失権します。
このように払込を行わない者がいる場合でも、定款で定めた最低額の出資があれば打切発行が認められ、払込のあった金額のみで払込手続の完了となります。この点、従来の商法においては設立時の打切発行が認められていませんでしたが、会社法においては認められました。
また、払込手続においても、従来の商法では発起設立・募集設立ともに銀行等が払込金を証明する払込金保管証明の制度が設けられていたのに対して、会社法では発起設立については採用せず(募集設立については引き続き採用)、代わりに払込があったことを証明する書面(発起人名義口座の預金通帳のコピーなど)を設立登記手続において提出することで足りることとされました。

【株式会社の設立手続−株式の発行に関する事項の決定】

会社の設立にあたって発行される株式の総数は定款で定められることになりますが、その株式の発行に関するその他の事項のうち以下の項目については定款で定めるか、あるいは定款で定められない場合には発起人全員の同意により決定しなければなりません。
@発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
発起人は会社設立時に発行する株式を少なくとも1株以上引き受けなければなりませんが、その引き受ける株式の数を決定しなければなりません。
A上記設立時発行株式と引き換えに払い込む金銭の額
株式を引き受ける対価として、発起人は会社に対して払込を行うことになりますが、その払い込む金額を決定しなければなりません。
B成立後の会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
会社の資本金は、株式発行により払い込まれた金銭の額または現物出資の場合にはその出資された財産の価額により決まります。しかし払い込まれた金額の全額を必ず資本金としなければならないわけではありません。
払込金額の1/2以内(ちょうど1/2を含みます)の金額は資本金に組み入れずに資本準備金とすることもできます。資本準備金は会社の貸借対照表の資本の部の中の資本剰余金として表示されるものです。このような経緯で発生した資本準備金は払込剰余金といいます。文字通り、払い込まれた金額のうち資本金とされなかった剰余金、という意味です。
払い込まれた金額のうち、いくらを資本金とし、いくらを資本準備金とするかについては発起人の決定に委ねられます。従って、会社設立にあたっての払い込みについて、資本金と資本準備金の額を発起人が決定しなければなりません。なお実務的には、大半のケースで払込額の全額が資本金とされています。


【株式会社の設立手続−定款(任意的記載事項)】

定款の記載事項には、前述のとおりその記載がない場合には定款の効力がなくなり、その結果会社の設立自体も無効となる絶対的記載事項、およびその記載がなくとも定款は有効であるがその事項自体は無効となる相対的記載事項がありますが、これ以外にも任意的記載事項があります。
任意的記載事項は、その記載がなくとも定款はもちろんのことその事項自体の効力にも影響がないものです。
つまり、絶対的記載事項および相対的記載事項はその記載が欠けることによって何らかの効力に関する法律上の影響があるのに対して、任意的記載事項はその記載の有無が効力について特に影響を生じないものになります。
但し、一旦定款に記載した以上は、その事項を変更するためには定款変更の手続による必要が出てきます。
実務的に定款に記載される任意的記載事項には、例えば以下のような項目があります。
<株主総会の議長>
株主総会の決議事項については、株主による議決権行使によって決定されていきますが、その議事運営を行う者が必要になってきます。そのため定款であらかじめ誰が株主総会の議長になるのかを定めてあるケースが一般的です。この場合、代表取締役社長が議長となる旨を定めていることが最も多いと思われます。
<取締役および監査役の人数>
会社の役員である取締役および監査役の人数を定款で定めているケースもよく見受けられます。この場合、「取締役は1名以上とする」などのように最低限の人数のみを定めることもあれば、「取締役は1名以上3名以下とする」などのように具体的に人数の範囲を定めるケースもあります。
<事業年度>
会社の決算期間に関する定めです。ほとんどの場合は年1期の定めとしており、例えば「当会社の事業年度は毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする」というような規定となっています。


【株式会社の設立手続−定款(相対的記載事項)】

会社法では、定款への記載事項として前述の絶対的記載事項とは別に相対的記載事項を列挙しています。
相対的記載事項は、これが定款に記載がなくとも定款自体の効力は無効とはなりませんが、定款に記載がない限りその事項については効力が発生しないものです。
会社法には次の項目が挙げられています。
@金銭以外の財産を出資する者の氏名または名称、当該財産およびその価額ならびにその者に対して
割り当てる設立時発行株式の数
つまり設立時に現物出資による株式発行を行う場合には、定款に上記の記載を行うのでなければそ
の効力を生じないことになります。
現物出資の目的たる財産は、貸借対照表の資産の部に計上できるものであれば何でもよいことに
なっています。例えば、物品類・不動産・有価証券・特許権・のれんなどが現物出資の目的とな
る財産になります。
現物出資の際の目的物の価額が過大に評価されるなどすると、会社の財産的基礎を害することに
つながるため、会社法ではこのような規制を設けるとともに現物出資をなしうる者を発起人に限
っています。
A会社の成立後に譲り受けることを約した財産・その価額ならびにその譲渡人の氏名または名称
つまり会社成立前に(設立中に)、会社成立を条件として財産を成立後の会社が発起人から譲り
受けることを約する場合(これを財産引受といいます)には、定款に上記の記載を行うのでなけ
ればその効力を生じないことになります。
このような財産引受は現物出資への規制に対する抜け道として利用される恐れがあるため、会社
法は現物出資と同様に定款への記載がある場合のみその効力を認めています。
B会社の成立により発起人が受ける報酬その他特別の利益およびその発起人の氏名または名称
つまり会社が発起人に対して、会社設立に尽くしたことへの対価として金銭による報酬または配
当優先権などの特別な利益を与える場合には、定款に上記の記載を行うのでなければその効力を
生じないことになります。
C会社の負担する設立に関する費用
つまり定款の作成費など会社の設立に必要な費用を会社に負担させる場合には、定款に上記の記
載を行うのでなければその効力を生じないことになります。
発起人の不当な支出により会社の財産的基礎が害されるのを防ぐために、会社法ではこのような
規制をしています。従って定款に記載がない費用については、発起人自身が負担しなければなら
ないことになります。但し、定款認証手数料や設立登記の登録免許税など金額が確定的で恣意性
の介入する余地がないものについては、定款に記載がなくとも会社の負担となります。

【株式会社の設立手続−定款(絶対的記載事項)】

株式会社の設立に際して、発起人は定款を作成しこれに署名しなければなりません。
定款は株式会社の組織・運営に関する基本的な規則であり、会社の憲法のような意味合いのものです。
また定款は、作成するだけではなく公証人の認証を受けなければ有効とはなりません。
この定款の記載事項には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」というものがあります。この「絶対的記載事項」の記載がないか、又は記載が違法な内容ものである場合には、定款が無効となるのみならず会社の設立自体も無効となるので極めて重要な項目です。
「絶対的記載事項」には、次のような項目があります。
@目的
会社の事業内容です。もちろん複数の目的を定めることも可能です。但し、実務的には定款に記載
する目的の文言に注意が必要です。どんな表現でも認められるわけではなく、その事業内容を適切
に表示していなければなりません。そのため、どのような表現にするかなどについては、司法書士
などの専門家に相談されることをお勧めします。
A商号
会社の名称です。従来は類似商号の制限がありましたが現在は撤廃されましたので基本的には自由
に名称を選択することができます。但し、広く世間に認知されている会社名と混同されうるような
名称については制限されます。また。従来は認められていなかったローマ字や記号も商号に使用で
きるようになりました。
B本店所在地
会社の本店を置く住所地です。但し、定款上は例えば「名古屋市中区に置く」という段階までの記
載でも足ります。これに対して、登記上は番地まで含めた正式な本店所在地を登記することになり
ます。
C設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
会社の設立に際して出資される財産の金額です。金銭出資(金銭による払込)か現物出資(金銭以
外、例えば土地や車両などの物による払込)いずれも場合でもその金額を記載します。



【株式会社の設立手続−発起人】

株式会社の設立に際しては、1人以上の発起人が必要となります。1人以上ですから、当然1人でも足ります。
株式会社の設立手続においては、この発起人がまず定款(会社の組織・運営などに関しての基本的な規定で、会社の憲法のようなものと言えます)を作成し、発起人全員がこれに署名または記名捺印しなければなりません。
発起人となるための資格制限などは特に設けられておらず、個人はもちろんのこと、法人でも発起人となれます。
しかし、発起人は会社の設立に際して発行する株式を必ず1株以上引き受けなければならないため、会社の最初の株主(の1人)となります。
このような発起人の法律上の地位は、「設立中の会社」の機関と解されています。会社は設立登記によってはじめて権利能力(法人格)を取得しますので(過去記述参照)、設立登記がまだなされていないこの設立手続中の段階では法律上会社として成立していません。しかし、この設立手続中の会社であっても、定款が作成され、発起人が株式を引き受けた段階では会社の組織がある程度確定してきているといえるため、この段階の会社を「設立中の会社」と呼び、法律上の位置づけとしては権利能力なき社団と解されています。
権利能力なき社団とは、法律上正式には権利能力(法人格)を取得していないものの、その組織としての実態が観察されるものをいいます。具体的な例としては、サークル、学会などを挙げることができます。
この権利能力なき社団は文字通り権利能力を有していないため、法的に権利義務を直接取得することはできず、その構成員に権利義務が帰属することになります。
発起人はこのような権利能力なき社団としての「設立中の会社」の機関と解されており、従って設立手続中に発起人が行った行為の結果は形式的には発起人に帰属するものですが、実質的には会社に帰属するものであり、設立登記により会社が権利能力を取得するとともにこれらの権利義務が形式的にも実質的にも会社へ帰属することになると考えられています。



【株式会社の設立手続】

会社の設立手続については、合名会社及び合資会社の場合、社員は定款自体によって決定され、かつ、社員は会社の機関となることが原則であることから、設立手続は簡易となっています。すなわち、定款の作成及び設立登記によって合名会社及び合資会社の設立手続は完了します。
これに対して株式会社の場合、定款には基本的な事項のみが記載されるため、定款の作成とは別の手続として株式の引受人の確定(特に募集設立の場合)や取締役等の会社機関の選任が行われます。
従って、株式会社の設立手続には一定の期間を要します。また、合名会社及び合資会社の場合と比べて、設立に関与する人数が多数にわたることも珍しくなく、設立手続も煩雑なことから、会社法は株式会社の設立に関して厳格な強行規定を設けています。さらには、設立に関わる発起人に対しても厳格な責任を負わせることにより、株式会社の設立手続を厳しく取り扱っています。
株式会社の設立方法には、発起設立と募集設立という2つの方法があります。
発起設立とは、株式会社の設立にあたって発行される株式の全てを発起人のみにより引き受けられる方法をいいます。
これに対して、募集設立とは、設立にあたって発行される株式の一部を発起人が引き受け、残りの株式については発起人以外で株主を募集する方法をいいます。
合名会社及び合資会社と異なり、株式会社は元来大規模経営形態を想定した会社組織とされているため、このように設立時の発起人のみではなく、他に広く株主を募集することにより多数の出資者が会社に参加することを想定して募集設立という方法も設けています。
今回以降、株式会社の設立手続について詳しく会社法の規定を述べていきたいと思います。


【株式会社(概論)】

会社組織の中でも、最も一般的に広く知られている形態が「株式会社」です。
その「株式会社」の基本的な特徴として挙げられるのが、株式と株主の有限責任です。

株式とは、株式会社の出資者たる社員の地位をいいます。株主権ともいいます。また、この株式を有している者のことを株主といいます。
株式会社における株式は、均一的に細分化されています。細分化されているのは、株式会社という会社形態の本来的な目的が、多数の者が会社に参加できるようにすることで大規模な経営形態を可能とすることにあるからで、そのためには少ない資金からでも容易に出資することができるようにする必要があるからです。均一化されているのは、そのように多数の者が参加するために、その社員間の問題を簡単・画一的に処理できるようにするためです。
株式(株主権)を有することによる具体的な権利としては、株主総会における議決権行使による経営参加権や配当請求権、残余財産分配請求権などの経済的な権利があります。

次に株主の有限責任とは、株主は会社に対してその有する株式の引受価額を限度とする責任を負うのみで、それ以外には何らの責任も負わないことをいいます。
例えば、会社が倒産に瀕する場合でも、株主は出資した金額が無価値になるだけで会社に対して追加出資義務を負うことはなく、また銀行などの会社債権者に対して何らの支払い義務も負わないこととなります。
ちなみに実務上、中小企業においては同一人が株主=会社経営者=銀行借入の連帯保証人ということが珍しくありません。経営破綻などのケースでは、銀行から会社だけではなく個人としても返済を求められることがありますが、これは株主としての返済義務ではなくあくまで連帯保証人としての返済義務を負っているに過ぎません。もし連帯保証人になっていなかったとしたら、株主としては何らの責任も追及されることはありません。

【会社の解散】

会社を成立させ、会社としての権利能力(法人格)を得るための手続が先に述べた会社の設立手続であるのに対して、会社を消滅させ、会社としての権利能力(法人格)を消滅させる手続が会社の解散手続きです。

会社の解散は、法律の定める手続により、まず解散を行います。解散した場合には、これを登記(解散登記)することになります。但し、解散によって直ちに会社の権利能力(法人格)が消滅するわけではなく、解散後も引き続き清算手続を目的として会社は存続します。そして、清算手続の完了によって会社は消滅します。清算手続が完了したときにも登記(清算結了登記)が必要になります。

具体的な手続の流れは以下の通りです。
会社は解散日において、それが決算期の途中であっても一旦事業年度を終了させることになります。従って、解散日を決算日として決算手続を行う必要があります(税務申告も行います)。解散後には、会社の資産を売却などにより換金し、これを負債の支払に充てるなどにより清算手続を進めます。そしてもし資産が残った場合には、最終的に株主に残余財産分配を行って清算手続が完了します(税務申告が必要になります)。
ちなみに、株式会社の場合には、解散によって決算日が元々の決算日ではなく解散日の翌日から1年後の応当日に変更となります。株式会社以外の会社については解散による決算日変更はなく、解散後も元々の決算日のままとなります。
従って、解散後の清算手続が長引く際には、株式会社については解散日の翌日から1年後の決算日、株式会社以外については元々の決算日が清算手続と途中で到来することもあります。その場合には、それぞれの決算日において決算手続を行う必要があります(税務申告も行います)。

このように会社自らが解散手続を行う場合とは別に、裁判所が一定の場合には会社の解散を命ずることもできます。一定の場合とは、設立が不法の目的に基づいてされたとき、などの3つのケースが<会社法>には規定されています。



【会社の機関と社員】

会社は、当然ながらそれ自体は生き物ではないため、自ら意思決定を行うことも具体的な行動を行うこともできません。そこで会社の意思を決定したり、意思決定内容に基づいて実際に行動したりするものとして人により構成される「会社の機関」というものが定められています。会社はこの「機関」を通じてその意思を決定したり行動したりすることになります。
例えば株式会社の場合には、株主総会や取締役会、代表取締役などの「機関」が設けられており、株主総会や取締役会において会社としての重要な意思決定を行ったり、代表取締役によって実際の会社としての行動(例えば、契約など)が行われます。
当然、株主総会や取締役会の構成員は人ですし、代表取締役にも人が就任します。しかしこれらの人が会社の「機関」として活動したものについては、法律上会社の行為となります。
例えば、代表取締役に就任している人が代表取締役としてある物件の購入契約を他者と締結する場合、実際に契約交渉を行い契約書に押印するのは代表取締役である人であっても、その法律効果(物件の所有権を得ること)は会社に帰属します。
このように会社は、「機関」を通じてしか活動をすることができません。

また、会社には上記のような会社が活動するために必要な「機関」とは別に、会社そのものの構成員である「社員」という地位が存在します。
「機関」は会社が実際に活動するためのものであるのに対して、「社員」は会社の所有者的な地位にあるもので、株式会社においては株主となります。
「社員」は会社の所有者としての地位に基づいて、会社に対して例えば利益配当請求権、残余財産分配権などの権利を有するとともに議決権を通じて会社の経営に関与する権利も持っています。

【会社の設立】

会社は、定款の作成、設立登記その他の手続を完了することにより、法律上当然に成立します。
つまり、法律で定められた手続を行い、法務局において設立登記手続を済ませるだけで会社の設立手続は完了となり、会社として有効に成立したことになります。
会社の具体的な成立時期は、設立登記を完了したときです。登記制度は、公示が本来的な目的のものですが、<会社法>は設立登記を会社の成立要件としているため、設立登記により会社は初めて権利能力を取得し法人格を得ることになります。
ここで権利能力(法人格)を取得するという意味は、法律の適用を受けることのできる資格を得る、ということです。法律の適用を受けるということは、例えば契約の当事者となったり、法律上の権利を主張したりすることができるようになる、ということです。
法律の適用を受けるためには権利能力を有していなければならず、権利能力を有するものは人(個人)と法人(会社など)のみとされています。
例えば、車は物なので権利能力を持つことができません。従って、権利能力を持たない車自体が自分の権利を主張することはできず、代わりに車の所有者である人が自己の車に対する所有権に基づいて車に関する法律上の権利を主張することになります。

以上のような権利能力(法人格)を、<会社法>では会社は設立登記によって得るとされているのです。

ちなみに会社がある事業を営むに際して所轄官庁などの許可や免許を必要とすることがあります(例えば、派遣業許可など)。しかしこの許可などを得ることは会社の成立要件ではなく営業開始の要件です。
会社の成立要件そのものである設立登記と、設立登記により成立した後の会社がその事業を行うことができるための要件である許可や免許とは異なるものです。





【会社法について】

会社を経営するにあたって適用される法規は様々です。会社法、民法、税法、会計法規、労働基準法など、実に多岐にわたる法規の適用があります。
その中でも、特に<会社法>は幅広い場面で関係してくる重要な法律です。
会社を経営する立場としては是非とも概略程度は把握しておきたい法律ですので、<会社法>の簡単な内容を順次説明していきたいと思います。

<会社法>は一般的な法律関係を規定(一般法といいます)する<民法>の特別法という位置づけになります。一般的な場面、例えば個人間の貸し借りの問題、一般的な契約関係の問題、相続や婚姻の問題などの場面で適用される<民法>とは異なり、「会社」という特別な分野で適用されるのが<会社法です>。

一般法である<民法>と特別法である<会社法>の関係は、まず<民法>で一般的な法律関係を定めておき、特定の分野や場面で一般的な規定である<民法>の内容では不都合だと考えられる部分についてのみ特別法である<会社法>が適用される、ということになります。

具体的な適用関係は、ある条件(例えば、一般人ではなく会社が主体として、など)である項目(例えば、お金の貸し借りを行うが金利を定めていなかった場合の適用金利、など)について、まず<会社法>に規定がある項目については<会社法>が優先的に適用されます。そして、<会社法>が優先的に適用される場合には、同一項目についての<会社法>の規定内容と<民法>の規定内容が異なるとしても<会社法>の規定内容が優先されます。
他方、<会社法>に規定のない項目については原則通り<民法>が適用されることになります。
つまり、<民法>の規定が原則なのに対して、<会社法>の規定は例外的な定めになりますが、<会社法>に定めのある項目については<会社法>が優先される、ということになります。

そうはいっても、「会社」を経営する場面であれば、<会社法>に規定のある項目に頻繁に出会うことになるため、実際にはまず<会社法>の規定を確認し、規定がなければ<民法>などの規定を確認する、という流れになります。