会社法では、定款への記載事項として前述の絶対的記載事項とは別に相対的記載事項を列挙しています。
相対的記載事項は、これが定款に記載がなくとも定款自体の効力は無効とはなりませんが、定款に記載がない限りその事項については効力が発生しないものです。
会社法には次の項目が挙げられています。
@金銭以外の財産を出資する者の氏名または名称、当該財産およびその価額ならびにその者に対して
割り当てる設立時発行株式の数
つまり設立時に現物出資による株式発行を行う場合には、定款に上記の記載を行うのでなければそ
の効力を生じないことになります。
現物出資の目的たる財産は、貸借対照表の資産の部に計上できるものであれば何でもよいことに
なっています。例えば、物品類・不動産・有価証券・特許権・のれんなどが現物出資の目的とな
る財産になります。
現物出資の際の目的物の価額が過大に評価されるなどすると、会社の財産的基礎を害することに
つながるため、会社法ではこのような規制を設けるとともに現物出資をなしうる者を発起人に限
っています。
A会社の成立後に譲り受けることを約した財産・その価額ならびにその譲渡人の氏名または名称
つまり会社成立前に(設立中に)、会社成立を条件として財産を成立後の会社が発起人から譲り
受けることを約する場合(これを財産引受といいます)には、定款に上記の記載を行うのでなけ
ればその効力を生じないことになります。
このような財産引受は現物出資への規制に対する抜け道として利用される恐れがあるため、会社
法は現物出資と同様に定款への記載がある場合のみその効力を認めています。
B会社の成立により発起人が受ける報酬その他特別の利益およびその発起人の氏名または名称
つまり会社が発起人に対して、会社設立に尽くしたことへの対価として金銭による報酬または配
当優先権などの特別な利益を与える場合には、定款に上記の記載を行うのでなければその効力を
生じないことになります。
C会社の負担する設立に関する費用
つまり定款の作成費など会社の設立に必要な費用を会社に負担させる場合には、定款に上記の記
載を行うのでなければその効力を生じないことになります。
発起人の不当な支出により会社の財産的基礎が害されるのを防ぐために、会社法ではこのような
規制をしています。従って定款に記載がない費用については、発起人自身が負担しなければなら
ないことになります。但し、定款認証手数料や設立登記の登録免許税など金額が確定的で恣意性
の介入する余地がないものについては、定款に記載がなくとも会社の負担となります。
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