【株式会社の設立手続−発起人】

株式会社の設立に際しては、1人以上の発起人が必要となります。1人以上ですから、当然1人でも足ります。
株式会社の設立手続においては、この発起人がまず定款(会社の組織・運営などに関しての基本的な規定で、会社の憲法のようなものと言えます)を作成し、発起人全員がこれに署名または記名捺印しなければなりません。
発起人となるための資格制限などは特に設けられておらず、個人はもちろんのこと、法人でも発起人となれます。
しかし、発起人は会社の設立に際して発行する株式を必ず1株以上引き受けなければならないため、会社の最初の株主(の1人)となります。
このような発起人の法律上の地位は、「設立中の会社」の機関と解されています。会社は設立登記によってはじめて権利能力(法人格)を取得しますので(過去記述参照)、設立登記がまだなされていないこの設立手続中の段階では法律上会社として成立していません。しかし、この設立手続中の会社であっても、定款が作成され、発起人が株式を引き受けた段階では会社の組織がある程度確定してきているといえるため、この段階の会社を「設立中の会社」と呼び、法律上の位置づけとしては権利能力なき社団と解されています。
権利能力なき社団とは、法律上正式には権利能力(法人格)を取得していないものの、その組織としての実態が観察されるものをいいます。具体的な例としては、サークル、学会などを挙げることができます。
この権利能力なき社団は文字通り権利能力を有していないため、法的に権利義務を直接取得することはできず、その構成員に権利義務が帰属することになります。
発起人はこのような権利能力なき社団としての「設立中の会社」の機関と解されており、従って設立手続中に発起人が行った行為の結果は形式的には発起人に帰属するものですが、実質的には会社に帰属するものであり、設立登記により会社が権利能力を取得するとともにこれらの権利義務が形式的にも実質的にも会社へ帰属することになると考えられています。