資本的支出と修繕費について

資本的支出とは、法人が有する固定資産の修理・改良等として支出した金額のうち、
その固定資産の価値を高め、又は、その耐久性を増すこととなると認められる部分に
対応する金額をいいます。

資本的支出となる金額については、その支出日の属する事業年度において支出額の全額が
損金算入されるわけではなく、原則として、支出事業年度以後の各事業年度において、
減価償却費として損金算入していきます。

下記のような金額は、原則として、資本的支出に該当します。
@ 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
A 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
B 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した
  費用のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える
  部分の金額
 ※ 建物の増築、構築物の拡張、延長等は、建物等の取得に当たります。


一方、修繕費とは、法人が有する固定資産の修理・改良等として支出した金額のうち、
その固定資産の通常の維持管理のため、又は、き損した固定資産につきその現状を
回復するために要したと認められる部分に対応する金額をいいます。

修繕費となる金額については、その支出日の属する事業年度において支出額の全額が
損金算入されます。

下記のような金額は、修繕費に該当します。
@ 建物の移えい又は解体移築をした場合(移えい又は解体移築を予定して取得した
  建物についてした場合を除く)におけるその移えい又は移築に要した費用の額。
  ただし、解体移築にあっては、旧資材の70%以上がその性質上再使用できる
  場合であって、当該旧資材をそのまま利用して従前の建物と同一の規模及び
  構造の建物を再建築するものに限る。

A 機械装置の移設(≪集中生産を行う等のための機械装置の移設費≫の本文の適用の
  ある移設を除く)に要した費用(解体費を含む。)の額

B 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額。
  ただし、下記に掲げる場合のその地盛りに要した費用の額を除く。
  (イ) 土地の取得後直ちに地盛りを行った場合
  (ロ) 土地の利用目的の変更その他土地の効用を著しく増加するための地盛りを
     行った場合
  (ハ) 地盤沈下により評価損を計上した土地について地盛りを行った場合

C 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う
  床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額。
  ただし、その床上工事等が従来の床面の構造、材質等を改良するものである等
  明らかに改良工事であると認められる場合のその改良部分に対応する金額を除く。

D 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に
  要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した
  費用の額



上記の資本支出の金額に該当するような修理、改良等のための支出であっても、
下記に該当する場合には、修繕費として損金経理することができます。
@ その修理、改良等のために要した費用の額(その修理、改良等が2以上の事業年度
  にわたって行われるときは、各事業年度ごとに要した金額)が20万円に満たない場合

A その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績
  その他の事情からみて明らかである場合



実務上では、資本的支出か修繕費か、どちらの支出に該当するか不明な場合があります。
修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが
明らかでない金額がある場合において、その金額が下記のいずれかに該当するときは、
修繕費として損金経理をすることができます。
@ その金額が60万円に満たない場合
A その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額の
  概ね10%相当額以下である場合
   ※ 前期末における取得価額については、当該固定資産について行った
     資本的支出等の金額が含まれため、注意が必要です。


資本的支出か修繕費かの判断により、その事業年度の損金算入額が大きく異なることが
多く、当然納税額も異なってきます。
資本的支出か修繕費かの判断は、慎重に行いましょう。

スタッフO